紀伊半島の環境保と地域持続性ネットワーク 紀伊・環境保全&持続性研究所
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 「害虫防除の常識」         (目次へ)

1.害虫とは                    

  3) 侵入害虫かどうか類別してみる       
 
 昆虫と植物との関係は、昆虫が植物の花粉を運んで植物の繁殖を助けたり、また、昆虫が植物を餌とする一方、植物は昆虫に食われないように耐虫性を発達させるなど、太古の昔から密接な関係を持ちながら共進化してきた。

 昆虫は、餌とする植物や他の昆虫などとの関係、棲む場所の違いなどによって種分化をとげ、全動物種の約70%を占めるほどの膨大な種数となった。世界の昆虫の種数は、研究者によって見解が異なるが、記載されたものが80万種〜100万種、今後記載されるであろう種も含めると1,000万種を超えると推定されている。

 一方、日本で記載されている昆虫の種類は約3万種とされている。このうち、農林業に害を与える昆虫は2,624種であり(農林有害動物・昆虫名鑑、2006)、昆虫種の約10分の1弱となっている。世界の害虫の種数は不明であるが、昆虫種の10分の1〜20分の1が害虫であるとすると数万種に及ぶことになる。従って、日本にいない世界の害虫の種数は膨大な数であり、これらが日本へ侵入する機会をうかがっている。

 輸入農産物に付着して未侵入の害虫が日本に入るのを防止するために、港湾や空港で植物検疫が行われている。果実に寄生するミバエ類、ジャガイモを加害するコロラドハムシ、リンゴ害虫のコドリンガなどの重要な害虫の侵入をくい止めている。しかし、航空機による輸入農産物が増加し、数日を経ずして海外から生鮮野菜や花などが到着するようになって、害虫の侵入機会が増加した。表3に最近20年間(1986年以降)に侵入した害虫の種類を示した。

 侵入害虫は、侵入後間もない時期には生産者にあまり知られておらず、また、日本では防除経験が無く、有効薬剤などによる防除法が確立していない場合が多いことから被害が出やすい。さらに、侵入害虫の原産地が様々であるので、その生理生態も多様である。このうち、多化性(1年に複数回発生する性質)で非休眠性の微小な侵入害虫は、施設栽培において年間を通じて増殖し、主要害虫となっている。侵入害虫の情報をいち早く知るためには、各県の病害虫防除所等の出す発生予察情報(特に、特殊報(新発生害虫を報じる場合が多い))に日頃注意を払い、侵入害虫の防除情報を収集し、的確な防除を行って被害を出さないようにする必要がある。


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